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ウィスパーレイン

教えます…

ウィスパーレイン

出航です……！

ウィスパーレイン

「…………」
ぼーっと天井を見上げていた。

ウィスパーレイン

スカートまで水に浸かったまま、首を上に向け……

ウィスパーレイン

「！！！！！！！！？？？？？？？？？？」

ウィスパーレイン

二回声をかけられたときに初めて自分以外の存在に気付いた。
それはもう、すごい速度で振り返った。

ウィスパーレイン

「あ、あ、ああ……」
口を動かす。言葉にならない……！

ウィスパーレイン

「……ど、どうも……失礼しています……」
もう。この場所にいることがいたたまれない。

ウィスパーレイン

「……ウィスパーレイン、と名乗っています……」
ああ、名乗りすら遅れていた。
非礼に非礼を上塗りし続けている……。

ウィスパーレイン

「……申し訳ありません。大丈夫です……」
ゆらっと立ち上がる。
「医師が心配されるようでは……面目が立ちませんね」

ウィスパーレイン

利害の一致する関係……
目覚めて、私はこの心地いい水音のする空間にいた。この人……井ノ上さんも同じ立場だということだろう。

ウィスパーレイン

「ええ。おケガがあれば……申しつけください……」
「私も、実は今何が起きているのか分からないのです……井ノ上さんとご協力できるなら……それはありがたいですが……」

ウィスパーレイン

「……こちらこそ、よろしくお願いします」
こくりと頷く。

ウィスパーレイン

井ノ上さんの態度は硬質だ。
でも……今までのことだけでも、悪意のない人だということは分かった。
私の方が、信頼してもらえるかどうかは別として……。

ウィスパーレイン

問いかけにはふるふると横に首を振りながら。

ウィスパーレイン

「先ほど、目覚めたばかりで……。
　この、青く美しい空間のことは私にも分からないのです……」

ウィスパーレイン

「そうですね……ここはとても静かで、穏やかに見えます……」

ウィスパーレイン

「しかし……経緯はともかく……。出口が見当たりませんね……」
記憶はないが、自分は外から入ってきた。
なら、外へ出るための出入り口もある……はず。

ウィスパーレイン

「え……！お、お待ちください……」

ウィスパーレイン

「……こ、怖くないのですか？未知の場所で、簡単に進んでしまうなんて……」
扉を見つけるなり、迷ったりする様子も見せないなんて……驚いた。

ウィスパーレイン

「……お体を大事にするべきだと、思います。生は一度しかないのですから……」
危なっかしい彼女にこくりと頷きつつ。

ウィスパーレイン

ではGMさん、地面を調べてみますね

ウィスパーレイン

技能は…振れますか？

ウィスパーレイン

ゾッ……！！！！？？？？！

ウィスパーレイン

歩みで波紋を立てながら、地面を見る。

ウィスパーレイン

「煌めく、星々のような一面の光……夜空に足を付けているようです」

ウィスパーレイン

しかし、この光源は……一体……？

ウィスパーレイン

というわけで【青い光】も見ておきます

ウィスパーレイン

「この灯……電球のように見えますが、熱も無いとは……」
壁に手を付きながら光源を間近で見る。

ウィスパーレイン

井ノ上さんを振り返って。

ウィスパーレイン

「不思議な場所、ですが……どうやら、他には何もないようです」
”何もない”という言い方も、この広間に対しては風情がなくはあるけど。

ウィスパーレイン

「……え？」
呆気に取られて。

ウィスパーレイン

「あ、ああ、ああ……あの……ありがとうございます」
顔を赤くしていく。

ウィスパーレイン

「嬉しいお言葉なんです！ただ……すみません、意識をしていなかったのに、褒めていただいて……気恥ずかしい、と言いますか……」

ウィスパーレイン

なんだか、とても嬉しくも……恥ずかしいことを言われてしまいました……。

ウィスパーレイン

「あ、あ……次のお部屋に向かいましょうか……？」
顔を隠すために俯かせながら。
……目の前の少女との身長差では、あまり意味が無いかもしれない。

ウィスパーレイン

「──えっ？」

ウィスパーレイン

実のところ、俯いていても顔を隠すためでしかないので足元なんて──

ウィスパーレイン

忠告むなしく、つま先からこつんと堅い感触が伝わった時には体が前に倒れていた。

ウィスパーレイン

「…………っ」
痛みに備えて、目を瞑る。

ウィスパーレイン

ぽふっ。

ウィスパーレイン

「…………？あ、れ……」
でも、予想していた痛みは来ず。柔らかいものに体を支えられていた。
おそるおそる目を開く。

ウィスパーレイン

すると、驚いたような彼女の顔が──

ウィスパーレイン

……近い！

ウィスパーレイン

「す、す、すいません……っ！すぐ離れます……！」
わちゃわちゃわちゃわちゃ
ただでさえ人と距離が近いのは得意ではないのに、申し訳なさや感謝の気持ちが混ざって、もうどうすればいいのでしょうか。

ウィスパーレイン

「……！？！？」
相手から離してくれなかった。

ウィスパーレイン

ccb<=60 (1D100<=60) ＞ 98 ＞ 致命的失敗

ウィスパーレイン

「──」
光に目を抑える、のも束の間。息をのむことも忘れて目の前の光景に魅入られた。
解放してもらおうともがくのもやめて。

ウィスパーレイン

「…………」

ウィスパーレイン

「綺麗……」
ようやく出たのは、零れるようなたった3文字だけ。
ただ、それだけの言葉でもこの気持ちを表すには十分だった。

ウィスパーレイン

わっ。
久しぶりに地面に足が着いた気がする。

ウィスパーレイン

「……ふふ」
彼女も同じく小さな一言。
それだけでも、同じ感動を共有できる人がいると分かって小さく笑みが漏れる。

ウィスパーレイン

「ありがとうございます、運んでくださって」
いや本当は降ろしてほしかったところはあるけど。
……嫌な気持ちはしなかった。

ウィスパーレイン

「ええ。海は私たちの故郷と言います。里帰り、と言えるかもしれません……」

ウィスパーレイン

居心地よく返す。
水気の多い場所の方が体調がよくなるので。

ウィスパーレイン

「ですが、ただの海ではありませんね。文明の跡が見えます……」
家具や、壁と床の文様を見渡しながら。

ウィスパーレイン

彼女の語り口は、客観的かつ冷静な分析に裏付けられて必要な事実だけを伝えてくる。
話すのが苦手な私には、聞きやすくて心地の良い話し方。

ウィスパーレイン

なんとなく……今まで見てきた中では軍人のような人たちに似ている。
でも、その言葉が不意に自信を失うのに気付き。

ウィスパーレイン

「魚……ですね」
壁や床に、海の風景が書かれている。

ウィスパーレイン

「ううん……」
少し頭を悩ませ。

ウィスパーレイン

ccb<=75　放浪医師 (1D100<=75) ＞ 39 ＞ 成功

ウィスパーレイン

ccb<=59 (1D100<=59) ＞ 41 ＞ 成功

ウィスパーレイン

「……生き物の分布がおかしいですね」
辺りを泳ぐ魚を見回しながら。

ウィスパーレイン

「本来なら、こんな水深に住んでいるはずがない魚まで泳いでいます……」
壁画と直接関係するかはわかりませんが、と付け加えて。

ウィスパーレイン

「偽物……ですか」
頷ける話だと思う。全てが普通ではありえないように動いているんだから。

ウィスパーレイン

……確かな生を持って動いているように見えるこの魚たちが、本当に偽物なのだろうか？

ウィスパーレイン

そこで目についたのは隅にいて、自分でもよく観察できそうな……小さな【蟹】。

ウィスパーレイン

「……？　不思議な模様ですね……」
星の模様を浮かべた蟹に近付いてみる。

ウィスパーレイン

「…………」
かわいらしく見えて手で触ってみる。

ウィスパーレイン

なで……なで……。

ウィスパーレイン

「あ……ええ、大丈夫です」
ひらっとカニから手を離して。

ウィスパーレイン

(多分)年下の子に視線を合わせられると……す、すごい気持ちになる。
誤魔化すように咳払いして立ち上がる。

ウィスパーレイン

「……！　わかりました」
さらりとした注意の言葉。
さっきの自分の身を大事にしてほいいという言葉を聞いてくれているみたいで嬉しい。

ウィスパーレイン

「そうですね……水面越しの日光で、海が輝いています」

ウィスパーレイン

彼女に続くように、辺りを見回して【紋様】を調べる。

ウィスパーレイン

では、しゃがみこんで砂を退けてみましょう

ウィスパーレイン

少し砂で擦れただけで皮膚が負けて、手が赤くなってしまった。

ウィスパーレイン

井ノ上さんの方を見上げて。
「これ……地図みたいです」

ウィスパーレイン

「わっ……！？」
目を丸くする。
……う、薄々思っていたけど……意外と距離の近い人。

ウィスパーレイン

小さく息を吐き。
「……私の身体は、大半の人よりも虚弱なのです。私の一族は、ずっと悩まされています……この体質に」

ウィスパーレイン

表情を変えた彼女に、自分も胸を締め付けられる思いになる。
「……ですから……井ノ上さん、私に思い入れてくださるのは嬉しいのですが……」

ウィスパーレイン

「それは、最後には残酷な結果になりますから……私のことは同じ屋根の下で雨宿りをしているだけの旅人だと思って、お気になさらず……ただの、一時的な協力者とだけ思っていただく方がよろしいかと……」

ウィスパーレイン

「手は……もう、大丈夫です。もう少し辺りを調べましょう」
井ノ上さんの手の中で赤みの引いてきた手を放して。
少しだけ距離を取って立ち上がる。

ウィスパーレイン

「え……」

ウィスパーレイン

「それ、は……」
言い返せなくて視線を下げる。

ウィスパーレイン

「……いえ」

ウィスパーレイン

言葉の温かさが、孤独な胸に染み込む思いがして。
手の温かさが、包まれた手から伝わり。

ウィスパーレイン

「ありがとう、ございます……っ」
震える声で吐き出す。

ウィスパーレイン

人を遠ざけるべきだと頭では分かっていても、心はずっとそうは思っていなかった。
ここまで近付いてくれる人がいて、それが分かった……。

ウィスパーレイン

「そ、そうですね……！」
何度も首を縦に振る。
繋がれた証のように結ばれた手をぼんやりと目に収めながら。

ウィスパーレイン

「人見知りな子みたいですね……」
イルカに向けて利き手を振ろうとして塞がれていることに気づいて、もう片方の手を振る。

ウィスパーレイン

海は故郷。
その深淵は果てしなく恐ろしくもあるけど……そこに棲むものたちには、やっぱり親しみがある。

ウィスパーレイン

「……地図によると……他にも、見て回れそうなところがありますね」

ウィスパーレイン

「……大丈夫です」
彼女の様子に何となく考えていることを察して、手を握る力を強くする。

ウィスパーレイン

「自衛くらいはできますし……困ったら、その…………た、頼らせ て…もら います、から」

ウィスパーレイン

あんまり言い慣れていないことなので恥ずかしいくらいどもりつつ。

ウィスパーレイン

「……はい！」

ウィスパーレイン

「これは…最初の区画でも見ました。星の模様の付いた生物……」
きょろきょろと辺りを見ていたが、示されるままにそれらを見て。

ウィスパーレイン

「それと、メッセージボトル……ロマンチックですね」
陸に辿り着くことなく、永遠に水底を揺蕩っていたメッセージ……。
何の縁あってか、その水底で人の手に届くとは。

ウィスパーレイン

サンゴに手を伸ばしてボトルを取り。
中身を検める。

ウィスパーレイン

ぱらぱら、とヒトデを手に乗せて見てみる。

ウィスパーレイン

ccb<=75　放浪医師 (1D100<=75) ＞ 75 ＞ 成功

ウィスパーレイン

「──の、ようですね……精巧にできています……」
そう彼女に語って。

ウィスパーレイン

「……あの、手紙を見ることをお願いしていいでしょうか……？」
ヒトデのせいで両手が塞がってしまった。
……繋がった手の方は、あまり離したくない。

ウィスパーレイン

「ふむ……ありがとうございます」
頷きながら聞いて。

ウィスパーレイン

「大型で多腕。ヒマワリヒトデが当てはまりますね……」

ウィスパーレイン

「ん、そうですね。確か……」
右の方を見る。地図では貝のマークがある方は、まだ進んでいないこちら側だったのでちょうどいい。

ウィスパーレイン

場所の構造を思い返しながら中央の方に進む。
……ぎこちなく手を引いて。

ウィスパーレイン

ccb<=75　目星 (1D100<=75) ＞ 35 ＞ 成功

ウィスパーレイン

鯨は全生物の中でも最大級の種で……
それを見上げる、という経験なんてそうそうできない。

ウィスパーレイン

「はあ……」
感嘆の息を漏らしつつ、思わず上に目を向けそうになって──

ウィスパーレイン

「……？なんだか、変じゃありませんか……あそこ」
砂地の一点を指さして、井ノ上さんに尋ねる。

ウィスパーレイン

「これは……」

ウィスパーレイン

ccb<=75　ヒラメとカレイって名前わける必要あるのかな… (1D100<=75) ＞ 60 ＞ 成功

ウィスパーレイン

「ヒラメですね」
左に目があればヒラメ。右にあればカレイ。
これはヒラメ。

ウィスパーレイン

……これにも星の模様が付いています。

ウィスパーレイン

「私の故郷は、海に近しい国でしたから……そこでの記憶が根付いているのかもしれません。……」

ウィスパーレイン

「……井ノ上さんは、お料理はされないのですか？」
ヒラメとカレイ、二つの違いは……生物としての魚には詳しくなくとも、料理をするなら知っている人が多いと思う。

ウィスパーレイン

「あ……はい」
仕事柄。さっきは話せないと言っていたけど……何なのだろう。
自然と腕を差し出して引かれやすいようにしつつ。

ウィスパーレイン

「貝。ありましたね……」
足元に転がる、【貝】に目をやって。

ウィスパーレイン

「……動く様子はありません。まるで、門番のようですね……」
貝の前に屈んで。

ウィスパーレイン

頷きつつ。
門番、という言葉を吐きながらまさに門である【海藻】に目をやる。

ウィスパーレイン

「”腐った海藻ほどよく絡む”……と、故郷の言葉にありますが……こんな立派な海藻だと、腐っていなくても通れなさそうです」

ウィスパーレイン

「……？　どうなさいました？」
ぴたりと止まった手に目を向けて。

ウィスパーレイン

「わ……！」
されるがままに手を引かれる。
突然の行動に驚きはあった。でも……。

ウィスパーレイン

彼女は合理的という言葉を標榜しているらしい。
常に危なっかしいくらいの勇断を繰り返してきた。それが、ここで回り道するというのなら……とても大きな気付きがあったのかもしれない。
……信じてみよう。

ウィスパーレイン

「井ノ上さん……っ！？」

ウィスパーレイン

「よ、よかった……」
ギリギリのところで避けた。
すごい反射神経だった……やっぱり、戦いに関わる人なのだろうか。

ウィスパーレイン

はい、と頷いて自分も目を移す。
……危ない目にあった自分の方を心配してほしかったけれど。

ウィスパーレイン

「オニヒトデ……ですね」
頷いて、ヒトデを懐から出す。

ウィスパーレイン

「ですが、この子たちは作り物ですよ……？」
訝し気な目で手の上に乗ったヒトデたちを眺め。

ウィスパーレイン

頷いて。

ウィスパーレイン

「白っぽくて、丸くて、腕が多くて、全身がトゲで覆われている…大きめのこの子です」

ウィスパーレイン

「ええ。ですから……あっ」
ヒマワリヒトデを…と言おうとして、はっとしたように口を押さえる。

ウィスパーレイン

ヒマワリヒトデとオニヒトデを見比べる。
思えば……ヒマワリヒトデには、腕しか……生えてない……（太い腕が目立つといえばそう）！

ウィスパーレイン

「なる、ほど……」
すごい記憶力と冷静な判断……。

ウィスパーレイン

「私では、考えも及びませんでした……素晴らしい思慮ですね……」
感嘆の息を吐いて。

ウィスパーレイン

「……ど、どういたしまして……」
褒め返された。

ウィスパーレイン

🌈

ウィスパーレイン

何かが起きる予感に息を吞んで色々試しましたが、何も起きませんでした。
息の呑み損をしてから貝のある部屋に戻りました。

ウィスパーレイン

！

ウィスパーレイン

何かが起きる予感に息を吞んで井ノ上さんが試すのを見守っていた。

ウィスパーレイン

「……！」
開く海藻の道。今度こそ息の呑み損にはならなかった。

ウィスパーレイン

「はい……！」

ウィスパーレイン

歩みを揃えて海藻の門を潜る。
地図を思い返した。この先にあったのは──

ウィスパーレイン

ccb<=59 (1D100<=59) ＞ 13 ＞ 成功

ウィスパーレイン

「……っ！」
覚悟はしていたけど、予想以上の大きさ……。

ウィスパーレイン

「あ……」
心配させてしまったみたいだった。

ウィスパーレイン

「……ごめんなさい。私は大丈夫です……」
……申し訳ない以上に安心できる気持ちがあるのは奥にしまいつつ。

ウィスパーレイン

「……お任せ、します」
小さく頭を下げる。守られるのは心苦しくとも、あの巨大な生物がもしもの時には危ないのは事実でもある。

ウィスパーレイン

手早く辺りを調べようと、【金色の壺】から目を向ける。

ウィスパーレイン

読めますかね…？

ウィスパーレイン

「──南に。」
と、壺に書かれた文章を読み上げる。

ウィスパーレイン

「星の刻まれた、と言うと……」

ウィスパーレイン

頷いて。
「それを四方の星砂に戻せ、ということのようです」

ウィスパーレイン

「エビには触覚があります」

ウィスパーレイン

「ヒゲ、と呼ばれたりするので馴染みは薄いですが……」

ウィスパーレイン

「そ、そんな……！」
顔を赤らめつつ、振られる腕に合わせて一緒に振る。

ウィスパーレイン

「そっ、それより……」
星砂、四方の穴には確かに水のような【砂】が溜まっている。
これのことだろうか……！とグルグル回る目を巡らせる。

ウィスパーレイン

「う、美しい砂……ですね……！」
話題を……逸らす……。

ウィスパーレイン

「な、なるほど！そうだったのですか……！」
……ポカンとされた気がする。

ウィスパーレイン

ひとまず、一度咳払いして。

ウィスパーレイン

「……星の模様の付いた生き物の力を借りればこの壺の力を取り戻せる、とあります。……試してみますか？」

ウィスパーレイン

「……ふう。何とか集められましたね」
腕の中でヒラメがピチピチと踊り狂っている。

ウィスパーレイン

…………。
なんだか…………。…………。つよそう。要塞……？

ウィスパーレイン

「はい。」
見つめ合う謎の時間を振り払って。ちょっとだけこの最強フォームみたいな井ノ上さんが元に戻るのは惜しいけれど。

ウィスパーレイン

では、砂に配置していきますか……

ウィスパーレイン

井ノ上さんのおっしゃった通り、
長い触角を持つエビは北に、
左を向くヒラメは東に、
住まいと生きるヤドカリは西に、
大きな鋏と平らな身体を持つカニは南に配置しますよ

ウィスパーレイン

ccb<=59 (1D100<=59) ＞ 55 ＞ 成功

ウィスパーレイン

「…………」
海の彼方へと泳いでいく二匹の巨大なものたちを、呆然と見送る。
こ、こんなことになるなんて……。

ウィスパーレイン

「ええ……向かってみましょうか」

ウィスパーレイン

小さな笑みを浮かべて、海洋生物を捕まえるときに離していた手を差し出しなおす。

ウィスパーレイン

……な、流れるように差し出しちゃった。
でも、もう引っ込められない。手は取られている。

ウィスパーレイン

そして、緊張の解けた手つきで手を引きつつ白い建物へ向かう。

ウィスパーレイン

「……ここも海に浸食されていますね」
どこか慈しみ籠った目で窓越しのクラゲを見上げて。

ウィスパーレイン

それを横目に、【窓】を眺める。

ウィスパーレイン

「……！？」

ウィスパーレイン

「ま……窓に！窓に！」
指を向けた──時にはもう、それはその場を離れていっていた。

ウィスパーレイン

「…………い、いえ。大きな魚が通っただけです……」
少し過敏だったかもしれない。

ウィスパーレイン

「……大きな瞳に覗かれるのは、こんなに恐ろしいことだったのですね。水槽の中の魚の気持ちはこんなものだったのでしょうか……」

ウィスパーレイン

「は、はい。取り乱して申し訳ありません……」

ウィスパーレイン

心配させるようなことばかりしてしまっている。
井ノ上さんの優しさに甘えている。よくないな……。

ウィスパーレイン

「──少し試してもよろしいでしょうか？」

ウィスパーレイン

屈んで、先ほど使わなかったヒマワリヒトデの作り物を鍵穴に使ってみる。

ウィスパーレイン

生まれた海流に、ぶわりと前髪を浮かせながら。

ウィスパーレイン

「……上手くいきました。よかったです」
彼女を見上げる。

ウィスパーレイン

「……お役に立てたなら……嬉しいです」

ウィスパーレイン

突飛な考えという自覚はあったが、正しかったらしい。
……何の説明もしていない行動の理由に、すぐに思い至る井ノ上さんの思考の速さには驚かされた。

ウィスパーレイン

星と太陽はちぐはぐな組み合わせのようだが、一つだけ当てはまるものがある。
海の星にして、太陽の花に見立てられるヒマワリヒトデ。
少しロマンチック。

ウィスパーレイン

……考えつく井ノ上さんも意外と……？

ウィスパーレイン

「それは……どういう？」

ウィスパーレイン

「……本当に、お優しいですね」

ウィスパーレイン

「ずっと続けてきた生き方ですから……すぐに変えるのは難しいかもしれません」

ウィスパーレイン

「ただ、私は……その。私と関わる人が、私のせいで不幸にならなければいいと……」
例えば、今俯かせてしてしまっていたように。

ウィスパーレイン

「でも、このやり方がかえって井ノ上さんを傷つけたり、負担になるようなら……」
「ゆっくりでも、変わっていければ……と思います」

ウィスパーレイン

「あうっ！」

ウィスパーレイン

な、何を……。

ウィスパーレイン

ど、どういう意味だろう……。
額を抑えつつ頭に疑問符を浮かべてる。

ウィスパーレイン

「…………そ、それは──その」

ウィスパーレイン

「……ずっと傍にいてくれるということでしょうか？」
変えたくなったら変えてくれる……とは。ひ、飛躍！？

ウィスパーレイン

「……だっ、大事なことなのです……が……！」
手に力を込める。

ウィスパーレイン

「……我儘を言えば、今すぐ返事を頂きたいです」

ウィスパーレイン

物言いたげな目で凝視する。

ウィスパーレイン

「きゃっ……！？」

ウィスパーレイン

「ずっ、ズルい……ですよ……！それは……！」
抵抗できないほど弱い体が今一番憎い。

ウィスパーレイン

「～～～～～～！！」
連行された。